だけど好き 4




俺は30分くらい静に落ち込んでいた。
するとコツンと物音が暗い室内に響いた。
どうやら窓ガラスに何かが当たったらしい。
しかし物音は止まらない。

何だよ。今、嫌な気分なのに何の嫌がらせだよ。
もしかして幽霊だったりして・・・。
いや・・・それはないか。
俺は恐る恐るカーテンを開け下を覗いてみた。
俺の嫌な予感は見事的中し、そこにいたのは見慣れた顔だった。
今一番会いたくない奴。しかたなく窓を開けた。
「止めろよ、バカ大。窓割れたらどーすんの?」
「バカじゃねーし。何で先帰ったわけ?」
何かいつもより声のトーンが低くて、どうやら大ちゃんは怒っているらしい。
「別に一緒に帰る約束なんてしてないじゃん。」
俺がそう言うと、大ちゃんは怪訝そうな顔をして二階の窓から顔を出している俺をじっと見上げてきた。
「何か・・・あったの?」
心配そうに言われて少しムッとした。
何かあったのはそっちじゃん。誰のせいでこんなに悩んでると思ってるわけ?
「だって・・・潤、怒ってるもん。家ン中 入れて?」
「ヤだ!!別に怒ってねーもん!帰ってよ!!」
俺はつい大声で叫んでしまった。
だって・・・家ン中はまずい・・・。
今日は金曜日で母さんは近所の講習会という名のお茶会に行ってるから家には俺しかいなかった。
つまり・・・二人きりになってしまう。
特に何の期待もしてはいないが・・・。
「潤が怒ってんのに帰れるわけねーじゃん。鍵開けてよ。」

大は昔から頑固で一度決めたらなかなか折れない奴なんだ。
何をどーしても家の中に入るつもりだろう。
放っておいたら何時間外で待っているか分からない。明日はテストだっていうのに。
俺は諦めて鍵を開けることにした。

玄関に行って鍵を開ける。
すると、俺がドアを開けるより先に外からドアを開けられてしまった。
「よぉ、潤。なんで怒ってんのかなぁ?」
う゛っ。いきなり大ちゃんの顔がアップになった。
大ちゃんは顔つきも大人だし、逞しい。俺より20pも高い身長のおかげで思いっ切り見下ろされてしまった。
くやしいよな、この身長差。
「だから、怒ってないよ。・・・大ちゃん。」
俺は目を合わせないようにする為に顔を背けた。
しかし、大ちゃんは俺の顎を掴むとくいっと自分の方に向かせた。
「やっと大ちゃんって呼んでくれた。やっぱり見上げるよりこっちの方がしっくりくるな・・・。」
大ちゃんはそう言って俺の頭をくしゃっと撫でた。
でも、俺はその手を振り払い言った。
「大ちゃんこそ何かあったんじゃないの?」
告白されたこととかさぁ・・・。
俺には内緒ってわけ?
「潤?どーしたんだよ・・・?別に何もなかっ・・・」
「告白!!」
俺は大ちゃんが言いかけていたのを遮って叫んだ。
言ってしまった・・・。

「告白・・・何で知ってんの?」
やっぱり・・・!どこかで何かの間違いなんじゃないかと願っていた俺の心が割れる音が聞こえてくるようだ。
「あ・・・歩いてたら偶然見ちゃって!なんか女のコと話してたから・・・何かなって思って・・・。」
俺がたどたどしく話すとしばらく大ちゃんは眉を吊り上げて聞いていた。
そして俺の腕を強引に引っ張り、俺の部屋に歩き出した。
「大ちゃん・・・?」

俺は無言で階段を上る大ちゃんと腕を掴む力の強さにすっかり動揺していた。
いつもの優しい大ちゃんじゃない気がして・・・。