窓ぎわに降る雪




教室に戻った俺は、時計を見ながら席に着いた。
後五分弱でHRが始まっていたいたところだ。
はぁぁ ため息をつくといきなり目の前が真っ暗になった。
そして押さえつけられるような息苦しさ。
「だ〜れだ??」
「ゆたか。」
俺はもう一度ため息をつくと俺の目を覆う手を退けた。
「何で直ぐ分かっちゃうかな?」

俺の目の前でけらけら笑ってるのは、こんなんでも学年 いや学園位一のやり手・・・
黒木豊。細くともたくましくとも言えないが、ある程度の筋肉がしっとりあるのが分かる。
うっすらと青白く光る髪が魅力的で、こいつのファンは学園を通して少なくない。
「そんなの毎度毎度されてりゃ、いくらでも検討がつく。バーカ。」
俺はバカだけは否定しろとモンクを言う豊を無視し、窓の外を見た。
部室から見える中庭程ではないが、自分の席からでも十分に綺麗な景色を見ることが出来る。
「そんなに怒るほどの事じゃないだろ?・・・んじゃさ、コレで許してよ。」
「!?・・・っあ!何しやがる!!」
豊は俺の頬に唇を寄せてきた。つまりキス・・・。
俺はもちろんすぐさま豊の体を突き飛ばしてやった。
他の奴らは別に何とも思ってないような顔をしている。
大声をあげた俺は自分だけ恥ずかしい奴のように思えた。
にしても、教室で男同士頬とはいえキスして当たり前のように平然としているとはなんちゅー奴らだ。
この学園は男子校の私立学校だ。
間違えても女なんかいない。が、男にも綺麗可愛いあるだろう。
従って男に走る者も多いワケで・・・。
豊はその気の奴だった。
しかもランク高いというかな。なかなかの好青年だし、ルックスも顔つきも良好。かなりの腕前ならしかったりで人気があるらしい。
で、その学園一のやり手の友達の俺までその気があると思われ声がかけられたりしていい迷惑だ。
ただ席が近くて、ただ他の奴より仲が良いだけで。
まぁ、俺も綺麗な奴は綺麗だと思うし、そーいう奴から誘われるのは悪くはないと思ってしまう時もある。
今朝、会った奴みたいに・・・。

「・・・涼助ー・・・。お前、大丈夫か?」
「は?」
豊がいきなり真面目な顔で言ってくるから、俺は馬鹿みたいな声でポカンとしてしまった。
「声。声に出てるぞ。お前の頭ン中。」
「嘘。」
「大マジ。お前ってそんなんでも色々考えてんのな。感心したよ。感心、感心♪」
俺はどうやら思ったことを口にしてしまったらしい。
「俺っ・・・!ちょと待て!!ゆ、豊、俺、どっから声に出してた!?」
ものによってはかなりの問題発言だぞ!?これって・・・!
「えー・・・綺麗な奴は綺麗だし・・・みたいなとこから♪」
おいおいおい!!いきなり核心じゃねぇか!ってことは・・・
「なぁなぁなぁ!涼助!今朝会った奴って誰だよ〜!」
やっぱり・・・。俺は一番聞かれたくないやつを聞かれてしまったらしい。
「・・・べ、別に・・・知らねぇー奴だった!!」
「知らない奴?それって、いや それってさ。雪みたいに白肌の奴?」
何でお前知ってんだよ。
「豊、多分お前が知ってる奴だ。そいつ・・・一年?」
何となく三年ではないだろう。小っちゃかったし。もう豊に喰われてんのかな、なんて考えながら俺は豊に聞いてみた。
「バ〜カ。お前、何言ってんだよ。」
「はぁ?だって俺知らねーし。三年じゃないだろ?だってけっこう小さかったぜ?」
「ったく。これだから。良いか・・・俺様の情報網を甘くみるなよ?そいつは・・・
転校生だ。」
転校生?
嘘だと思った。また、豊お得意の冗談だ。だけど、それはー・・・。
「嘘。」
本日2回目の俺の発した言葉とチャイムの音が同時に重なった瞬間 教室の扉が開かれた。
「ほら来た来た。真実は自分の目で確かめて見るモンだ。」
豊はそう俺の耳元で囁くと自分の席に座った。
前を見ると新米教師、鈴城先生が立っていた