窓ぎわに降る雪




暖かな日差しの中で俺はただ窓の外を見つめていた。
ただ一点を見るのではなく、中庭という広い視点で。
この学園で一番有名自慢な中庭なだけあってとてもキレイに整備されている。
ちり一つ落ちていないほど清掃がいき届いている。
俺もこの風景は嫌いじゃないけれど、こんなのどかな光景と暖かな日差しは今の俺にとってはただの眠気を煽るものでしかなかった。
ふと手に違和感を感じた。
「あー・・・。」
カタンと何かが落ちる音が聞こえた。どうやら俺は本格的に眠りかけていた様だ。
手に持っていたペンがすり落ちたのである。
けっこう遠くまで転がってしまったらしく、部屋の出入り口付近まで転がっている。
こんな朝早くの部室にはまだ誰一人として部屋の中にはいない。
書き上げの記事を書きに来ていた森狩涼助 俺以外にはー・・・



という事なので 俺しかいない部屋にはペンの落ちた後の余韻も過ぎ、静寂が戻ろうとしている。
俺はペンを拾おうと眠気のすっきりしない怠い体を立たせた。
「・・・眠ぃ・・・。」
机に体をうつぶせにしていた俺は、立ち上がる瞬間一度ふらついた。
立つときに足を椅子の脚にぶつけてしまったのだろう。
しかし、その痛みのおかげで眠気はだいぶ収まった。
後、ペンとの残り少ない距離。
俺が手を伸ばし、ペンを拾おうとした時ー・・・。
「はい。」
俺の目の前に差し出された俺のペン。
「・・・へ?あっ・・・。」
知らない奴だった。
ただそいつは雪のように 白かった。
俺の黒ペンを拾った細い指先は真っ白で透き通るように・・・綺麗だった。
指先だけではなくどこもかしこも白かった。
とにかく白くて白くて。細身の身体がそいつを余計に白々く見せていた。
俺ははっとなり、そいつからペンを受け取った。
その時微かに触れた手は雪のように 冷たかった。
「・・・あっ・・・ありがとう?」
俺はそいつの手の冷たさに驚いて言葉の語尾が疑問系の様に上がってしまった。
「・・・どーいたしまして?」
そいつはそう言うと、微かに微笑んだ気がする。
俺の影で丁度よく見えなかったが、確かに微笑んだ。
そいつは少女の様な細身の身体に似合う整った顔をしていた。
特に雪様な肌に薄桃色の唇が雪の上に散る小さな桜の様で綺麗に思えた。
「・・・き・・・れい。」
俺は無意識にそんな言葉を漏らした。
はっとなり俺はそいつがいる方を見た。
だが そいつはそこにはいなかった。
つい溶けてしまったんじゃないかと思って床を見てしまった。
「男・・・?か、あれで?」
ここ。男子校・・・だもんなぁーと生気がうっすらとぬけていく様な感じがした。
女の子だったら俺好み・・・。いや、完璧に。
そんな事を思いながら俺は部室を後にした。