窓ぎわに降る雪




「え〜皆。本日はあ〜・・・まぁ、何だその・・・。」
先生はどう切り出そうかと口ごもっている様子だった。
「先生!転校生だろ!?」
豊がにやりと不適な笑みを浮かべてそう叫んだ。
「そう!え〜転校生だ!転校生!おい、転校生入って来い!」
そう言うと先生は戸を開け転校生らしき人物を呼んでちょいちょいと手招きをした。
俺は後ろの方の席だったから良く見えなかったが、豊の言う通り確かに アイツらしかった。
朝、ペンを拾ってくれたあいつだ。
一瞬静まり、しばらくしていつもの様にざわめきだした。近くから、白いという声が聞こえた。
「・・・ど〜だ?涼助?お前と会った、例の美人サンじゃないの?」
豊がいきなり声をかけてきたから、少しドキっとした。多分今 俺、脈上がってる。
「確かじゃないけど・・・多分なっ。」
俺は豊に適当な言葉を返してまた視線を転校生に戻した。
そいつはやや下向きで前髪がかかっていて顔が良く見えなかったが、
学ランから見える白い手先が無理矢理俺に転校生がアイツだって事を認識させた。
「じゃあ、転校生君。皆に自己紹介だ!」
鈴城先生がアイツにそう言う。そうして転校生は自分の名前を黒板に書いているようだ。
書き終わると、頭をペコっと傾けて挨拶しただけだった。
「まぁ、彼は色々あってだな。色々と分からない事もあるだろうからな。仲良くしてやってくれ!え〜と、森狩。」
は!?何でおれ!?心の中で本気にそう叫んだ瞬間だった。
「席はあそこを使ってくれ。」
「はい。」
おわ〜。綺麗な声〜・・・。あ、そーいえば何て名前なんだろ?そう思い俺は黒板に書かれた漢字を目にやった。
何だ?この漢字。何て読むんだ?窓・・・まど?白・・・雪人。
「まどしろ・・・・ゆきひと?」
「・・・せきと。だ、馬鹿。」
ふと南極にいる様な気分になった。何でこいつが俺の隣にいるんだ!?
・・・あ、あいてる席って俺の隣だけが・・・。だから俺が仲良くしてあげなきゃなんないワケか。
・・・って今、俺 凄い暴言吐かれた気がするんだけど・・・。
馬鹿・・・。俺、今まで生きてきた中で一番傷ついたと思う。
あいつは俺にそう言ってどこを見ているか分からないような瞳で窓の奥を見つめていた。
豊が俺の耳元で
「朝会った奴って本当にあいつか?何かすっごく嫌われてそうな感じだったぞ?」
とひそひそと言った。
「多分、あいつ・・・。」
豊の言葉は半分も聞こえてなかった。
俺はもう一度黒板の字を見た。
窓白雪人・・・せきとって読むんだ・・・。
雪・・・ゆき。あいつにすっごく似合ってる。白くて冷たい肌。そして氷の様な態度。
イメージぴったり過ぎて怖いくらいで。
本当・・・綺麗だな、なんて。俺は何を思ってるんだ!?
何を思ってんだ!?何を思ってんだ〜!?あいつは男!断じて男!!・・・何だよな?絶対に?
そして俺は、授業が終わるまでに数えなくとも数回はあいつの事をチラ見した。
気付かないのか無視されているのかは不明で、なかなか目は合わないのだが 目が合ったら合ったで鋭い目つきで睨まれた。
正直怖かった。だが、俺以外の何人かも間違いなく窓白の事を見ていた。





これが俺達の一生で一度、一番最悪なセカンドコンタクト。
本当に今朝の微笑んだあいつなのか疑ってる俺。どうやら嫌われてしまった上に隣同士。
これからどうなってしまうのだろうか。

+fin+