途切れたレール




何もかも忘れてしまった
あの頃の記憶は何処にいってしまったのだろう?
どこに忘れて
どこに置いてきてしまったのだろう?

振り返るとそこには
錆びて外れた無数の線路
迷路のように
絡み合った糸のように

それが私の足跡
もしそうだというのなら
それはあまりにも・・・





『きゃ・・・!』
「ヨルダ!そっちは危ないよ!」

ヨルダの足下にある崩れた石段。
この城はどこもかしこも脆く、今にも壊れてしまいそうだ。
更にそこにヨルダが寄って行ってしまうから危なっかしい。

「・・・そこに何かあるの?」
『・・・・・・。』

言葉が通じない。
いや・・・
通じているかどうかは分からないが、反応は返ってくる。
ヨルダは黙って首を傾げた。

「じゃあ、そこに行こう。」

ヨルダの手を引いて その道を歩き出す。
先に階段を下り、ヨルダが通りやすいように階段付近の石やら瓦礫をどかす。

しばらくしてヨルダが降りてくる。

「ダイジョーブ?」
『・・・・・・!』

下から声を掛けると
ヨルダは階段の途中で止まってしまう。
引き返そうとして足を階段にかける。
「ちょ・・・ちょっと待って!上に戻るの?」



そう叫び呼び止めると、ヨルダは僕の方を向いて手を振った。
だけど僕にはそれが分からなかった。
「・・・え?・・・何?どういう事?」
そう聞くと
ヨルダは口元に手を持って行き何か物を考えているみたい。

『・・・ヤァー!』
そう言いいながら僕を見て向こうの方を指さした。

「あっちに何かあるの?」
『・・・。』

しばらく黙っていたけど、何だか難しい顔をして頷いた。
「分かった。じゃあ、気を付けて降りて来てね。」



ヨルダの指さした場所。
そこには線路のような物が引かれていた。
線路があるということは何か乗り物があるのかもしれない。

辺りを見渡していると、ヨルダがかけてきた。
「あ・・・良かった。ダイジョウブ?」
そう聞くと、笑って頷いた。
「君の教えてくれた所に線路があったよ。ほら!」
僕はその線路をヨルダに見せた。

ヨルダは不思議そうに線路を見つめている。
また小難しい表情をした。
しゃがみ込んで触ってみたりする。
始めて見るのだろうか?

「僕、向こうの方を探してくるね。ここで待ってて!」

ヨルダを残して僕は向こうの線路が続く方に向かった。
そうすると・・・
トロッコだ!

木造のトロッコが見えた。
近づいてみるとかなり古くさいものだったが十分使えそうだった。
日差しを浴び風に吹かれていたにも関わらず、草なども生えずにあった。
何か・・・工事や作業用ではない気がした。
誰かが楽しんで使っていたのだろうか?

城の断壁をなぞって線路は引かれていた。
風が気持ちいい場所だし、海も見える。

村から見たこの城は儚くも波は荒々しく波立っていたというのに。
城から見る海はただ静に小さな波を立てているだけだ。





僕は風を切って、トロッコに乗った。
ヨルダが線路を撫でていた。

「ヨルダー!見てみて!トロッコがあったんだよ!これで下まで降りてみよう!」
トロッコに乗ったままヨルダに声をかけた。

トロッコが近づいて来ると線路から離れ、少し遠くに逃げて行ってしまった。
怖がらせちゃったのかな?

「ねぇ、大丈夫だよ。トロッコに乗って行けば早く着くよ。」
『・・・・・・。』

目で訴えてくる。
「うんうん。でも怖くないよ。僕もここまで来れたし。それに風が気持ちいいよ。」
『・・・。』


ヨルダが静にトロッコに足を乗せる。
ヨルダは僕より背が高いから、僕より簡単に乗れる。
乗るとキィキィと板が軋んだ。
鉄の繋ぎ金具が音をたてた。

「ね。大丈夫でしょ?」
ヨルダはトロッコの端を掴んで、深く頷いた。








風を受けて駆け走るトロッコ
記憶の中の無邪気な少女は何の不安もなく、この風を一身に受ける
柔らかな心地はどこか感触が残っていて
心が安らいでくる

途切れたレールを繋ごう
二人でならきっと どこにだって繋がる気がした

目の前には ほら
遙か遠くまで線路は続いているのだから・・・



♦Fin♦♦


後書きという名の言い訳みたいなもの。
えっと・・・まず第一にアレですよ!
線路とかレールがどうのこうのっていう前に(こっちが本題なんですが・・・;)
私はイコが階段下にいたらヨルダのスカートの中見えちゃうでしょ!
ってなものを書きたかった!
でもそれをどう伝えれば良いのか?
うーん・・・言葉が分からないのは難しいです。

トロッコの少女は無論ヨルダです。(←補足)
宮部氏の小説の方でそんなようなシーンがあったなぁ。と思いまして!
幸せな時間ってやつですヨ!
あとイコは「ヨルダ!」
って名前で呼んだりすっるけ?自己紹介したっけ?
ってな具合に悩みましたが、忘れたんで呼ばせちゃいました♪