Temptation operation 3





「はっ…はぅぅ。」

肩を出し、大きく息をする。
「なぁ、潤也?こういう事したかったんだろ?」
「…そ、そう…なるのかな…?」
「・・・おっ。随分正直だなー。」

だって…俺だって本当は…。



「桃ー。今日泊まってくよな?」
「んー。でも家近いし…。」
「そういう問題じゃないだろ。久々に開放的な気分になれたんだ。泊まってってくれよ。」

潤也は俺のベッドで、シーツやタオルケットにくるまり顔だけ出している。
窓から入る夜風に湿った髪が揺れていた。

「…潤?」
「俺も何か良い気分だな。だってこんなに上手くいくなんて、幸せすぎて死にそう…。」
「……はぁ?」
「んーん!何でもない!」

上手くいくなんて…ってどういう意味だ?
何か引っ掛かる言葉だ。

「じゃあお休みなさーい!」
「あっ!こら!寝るには早い!」
頭からかぶったタオルケットを退けようとしたら、逆にその中に引っ張り込まれた。

「へへっ!大ちゃーん!久しぶりに二人で寝よ!」
「大ちゃんと一緒に寝るの何年ぶりだろーね?」
「…あ。」

そうだ。
俺達は本当に仲が良く、中学に上がって少しまでお互いの家で寝泊まりする事が多かった。
中学生になった俺は部活に部活で、潤也と何かするなんてことは無かったから。
だからどことなく潤也を避ける形になってしまっていたんだ…。
「大ちゃん…。俺、どんな形であれまたこうやって二人でいられるのがすっごく嬉しい。」
「…潤也。」
…俺は確かに潤也を避けていたが、それも全て潤也のため。
俺が潤也を好きになってしまったから。
しかし、その事が潤也に寂しい思いをさせていたなんて…。

「…ごめん。潤也。でも…。」
「…何。」
「…本当に、好きだから。ずっと昔から。だから…後悔しないで。」
「…してない。後悔なんて。」
「潤也は俺の事友達として見てるんじゃないのか?」
「…。」
「また親友みたいな、そういう…普通の関係に戻りたいんじゃないかって…潤也はそうなんだろ?」


「俺は…親友で良かった。」
「……。」
「親友で、良かったんだ。…それで満足してた。
でも、その…恋人どーしになれるならそっちのが嬉しいよ。
だってそれは独占出来るって事だろ?俺は大ちゃんが俺以外の人の世話焼いたり、優しくすんの嫌だもン。」
「…潤也。」

「ね?俺達って本当に相思相愛だろ?」

潤也は枕に抱きつきながら、笑ってそう言った。
この笑顔だけで俺の小さな悩みなんてどっか遠くに吹き飛んでしまいそうだ…。

俺達はお互いに側に寄り、添い向かい合うように並んで寝た。
柔らかい潤也の肌の感触がする。

「なぁ。やっぱ気になるんだけど・・・。俺に秘密で何か企んでただろ。」
「・・・あぁ。うん・・・企み、って程の事じゃないんだけど。」
「何だよ?」
「・・・黒木が教えてくれたんだ。」

黒木?
・・・ああ。涼助の友達かぁ・・・。
でも、あいつと潤也に何の関係があるわけ?

「教えてくれたって?」
「うーんと・・・何ていうか・・・。大ちゃんをおとす方法っていうのかなぁ?」
「俺を・・・おとす?」
「うん!例えば、大ちゃんのとこ来るときは俺 結構薄着だったでしょ。
それにさり気ないボディタッチ!他にも色々教えて貰ったんだけど・・・。」

やはり・・・!あの服装や行動は意図的なものだったようだ。
まったく、上手い具合に黒木に騙されたようだ。
潤也の純粋さにつけこんで遊んでいやがるな・・・。
黒木の悪戯な顔が浮かんできた。

「でも・・・効果はイマイチだったかな。」
「え?」
「だって俺が近づくと避けられるし、声かけても勉強するとか言うし。」
「そ、それは・・・。別に避けてたわけじゃ・・・。」

自分の理性の為・・・なんて言えないよな。

それから俺達は色んな事を話した。
話の途中で潤也は寝てしまっていたようだが、久々に潤也を抱き枕代わりにして眠れたのでそれは良しとしよう。
柔らかくふにふにした潤也はとても心地良いと思った。


気持ちよさそうに眠る潤也の額に軽くキスをおとすと、くすぐったいのか額を擦るような仕草をした。
それを見て笑ってしまったが、次第に俺も深い眠りにおちていった。


♦fin♦