Temptation operation 1




「あつっい!」
体温の上昇を訴える声。この台詞を聞くのはもう何度目だろう。
「桃、何か飲めば?」
「んー…別にいらない」
そう言って潤也は床にベターと転がった。
俺の部屋はクーラーがなく、ただいても暑いだけなのに潤也はこの夏休みの間ほぼ毎日俺の家に遊びに来ていた。
他に映画でもゲーセンでも連れてってやるって言っても俺の家が良いそうだ。

「暑いなら遊び行こうぜ。俺も暑いのヤだからさ〜。」
「は?ここでいいよ?大ちゃん暑いの?」
「ん…いや、桃がここで良いなら…良いんだけど…。」


……


確かに暑いけれど、問題はそこではない。

いや、強いて問題点を挙げるのならば・・・。
問題なのは、潤也の格好だ!
外に遊びに行く時ならば、もっときちんとした感じで来るのに何故か俺ん家に来る時はノースリーブなのだ!
いや、確かに暑いのは分かるのだが…目のやり場が…。
男同士でそういう概念はどうかと思うのだが…
当然ノースリーブから見える二の腕とか、ギリギリラインの鎖骨やら首筋やら…。
俺の部屋に二人きりなんて状況は理性が保たないって!
だって仮にも俺達は・・・。

「…大ちゃん?」
潤也はきょとんとこちらを向いて手をパタパタさせて自分を仰いでいた。
「いや…何でもないよ。」
いきなり黙り込んだ(いや、妄想してただけだけど…)俺を不思議に思ったのか怪訝そうな顔をする。
もしかして俺の考えてること、どっかの馬鹿みたいに声に出てたりして…。


「大ちゃんってば。いきなりどーしちゃったの?!」
「い…いや、何でもないって!」
出来るだけ潤也を見ない様に自分の机に座ってたが、潤也が近づいて来たらどうしようもない。
「っ!とにかく何でもない!だからもうちょっと離れろ!」
「えー!何で!?」
「勉強!すんの!!だから、どく!」
俺は潤也の肩を強く押し付けた。
「え〜勉強なんて、つまんないってば!遊ぼーぜー。」
「だぁぁ!抱きつくな!」
本当にもう!



この日はどうにかやけにベタベタしてくる潤也を無理矢理帰らせた。
あいつの最近の態度といったらどうだろうか。 何かにつけて接近してくる様な気がする。
服装は勿論、身体への接近が心なしか多い気がする。
さらに・・・俺の事を少し傾げて見るあの目とか・・・!

もしかして・・・俺は誘われているんじゃないのだろうか?

でも、友達同士ならそんな事どうって事ないことだし、特に何の意味もない。
それに・・・潤也がそんな事を考えるなんて思えない・・・。

俺の意識のしすぎなのかもしれないが・・・。
俺は潤也を大切にしてあげたいから、我慢してるのに・・・!


考えても考えても納得のいく考えは浮かばなかった。
潤也の返った後の静まりかえる俺の部屋はまるで色をなくしたように暗い。
俺は軽いため息をつくとその日は早く休むことにした。
今日も一日、色んな意味で疲れが溜まっていたようだ。
目を閉じると、直ぐに寝付く事が出来た。